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石田 恒
Journal of Biomolecular Structure and Dynamics, 19(5), p.839 - 851, 2002/05
被引用回数:11 パーセンタイル:26.27(Biochemistry & Molecular Biology)DNAのグアニン酸化損傷の影響を調べるために、正常なDNAであるd(CGCGAATTCGCG)とその酸化的損傷DNAであるd(CGCGAATTCGCG)(CGCGAATTCGCG),(G:7,8-dihydro-8-oxoguanine(8-oxoG)の分子動力学シミュレーションを1ナノ秒間、実行した。これは静電相互作用を効率的かつ高精度に計算する高速多重極子展開法(FMM)を用いた高精度シミュレーションである。シミュレーションの結果、8-oxoG付近で正常DNAには見られない新しい水素結合が生成されるのが見つかり、そしてこれが損傷DNAの構造を安定化させていることがわかった。また主鎖角がB構造,グリコシド結合角がhigh-構造,ヘリカルTwistが緩んだ構造をとることもわかった。更に、主成分解析により8-oxoG付近の水和状態の変化が損傷DNAの構造遷移のきっかけとして働いていることが示唆された。以上により、損傷DNA修復酵素は正常DNAと損傷DNAの静的構造及び動的構造の違いを認識していると考えられる。
石田 恒
Proceedings of the International Conference on Bioinformatics 2002 (CD-ROM), 6 Pages, 2002/02
核酸などの強い静電相互作用を持つ生体高分子の分子動力学には、高速かつ高精度なアルゴリズムが不可欠である。今回、静電相互作用を能率的に取り扱いながら時間ステップを増大するため、高速多重極子展開法(FMM)とマルチ時間ステップ法(MTS)を併用するアルゴリズムを構築した。FMMは計算領域をツリー階層的なセルに分割し、静電相互作用を高速かつ高精度に計算する。なお、このFMMは空間分割法で並列化された。MTSではLiouville演算子の高次展開法を用いてFMMにおけるセルの階層に適用できるようにした。この手法を用いて7,8-dihydro-8-oxoguanine(8-oxoG)を含む8-oxoG DNAの分子動力学を実行した。その結果、8-oxoG付近で主鎖角-がB構造,グリコシド結合角がhigh-構造,が異常に低い構造をとることがわかった。また、主成分解析により8-oxoG付近の水和構造の変化が8-oxoG DNAの構造遷移のきっかけとして働いていることがわかった。